蒸気機関車の旅

                          

結婚式を前に 

雨月物語に怯えていた 


正太郎のような 

放蕩者だから

いつか取り殺される


愛想を尽かして

出て行くのが先か 

               

私との30年を 

『波瀾万丈で面白かったわ』

と屈託なく笑う 


愛は波瀾の中にしか存在し得ない 

と嘯(うそぶ)いてみる




蒸気機関車は

何処にいざなう


カメラを担いだ

かたわの老人が行く 

                 

私も行こう

トンネルの向こうへ


蜃気楼のように湖面に映る

家を目指して




ゆっくりと 

スコッチを飲む 


ゆっくりと   

生きて行こう 


ゆっくりと

終着駅まで行こう 


死を望まなくなって

久しい

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