俳句Ⅲ


同じことを何度も書いている句があります、これは甲乙つけがたい時に書きます。決して同じことを何度も書くほど印象に残ったわけではありません。作品はあくまでも一つです。


芸術の秋だね今日はクラシック

はやばやと炬燵布団の老夫婦

猫ちゃんも冬の定位置確保せり

寒気来て暖気求めて沖縄へ

寒気団沖縄までも飲み込んで

熊出没ニュースばかりが目に留まる

この辺も熊が出るよね地蔵様

いわし雲弱魚焼きたる煙かな

秋雨の降る夜ダウンも暑くなく

秋鯖や風の通へる台所

秋鯖や酒を飲みつつ暮らしおり

秋雨やコキアの紅の滲みけり

夏予選珈琲でも飲めよ無死満塁

書類出しなにも浮かばぬ硯洗

書類出し硯を洗う曇り空

ナス南蛮みょうがに秋を盛り合わせ

秋深し庭を巡りて句を捻る

腹紅い鳥はもみじに潜みおり

秋空に紫煙は深く侵入す

背も痛くモニター越しに秋霞


朝露に濡れれど鎌の切れは良し

朝露や鎌研ぎの水事足れり

早朝に靴ふたつあり露時雨


啄木にケラほどまでの気概なく 夜の巷に流され消える

初恋の傷跡赤し赤とんぼ


残暑まだ冬の花壇にするも惜し

残暑まだ冬の花壇は見えもせず


近頃はハラスハラスと世が狭い

昔なら髪切ったよねは礼儀だよ

髪切った褒めればハラス無視もハラ

なにハラよそう言うあなた何ハラよ


秋散らすまだ早朝のゲリラ雨

露蹴散らすまだ時折のゲリラ雨

山道のアケビ人もクマも登り

飯島晴子 蕨手 収録 山道のアケビ人も熊も昇り という説もある

新涼や人の願いの1っ歩先

新涼や人の願いの先を見る


カワセミは紅葉の葉陰に潜みおり

錦秋に腹が紅き鳥見つく

腹紅き鳥は紅葉に潜みおり

媽祖祭や豊らかに笑む台湾娘

突入りや今なら通報晒し首

突入りや今ならネットで晒し首

曼殊沙華喰らいし後の彼岸かな

新米が高くて売れぬと嘆くJA

豊年やストも出来ない会社かな

秋分やおはぎは糖に悪いかも

お彼岸や和尚が来るので金算段

蝉しぐれ営業電話を黙し切る

近頃は駅前通りも秋出水

毛見役人豊作なれど米高く

藤袴南へ帰る蝶の群れ

藤袴アサギマダラ 南へと

女郎花水面に揺れる愁いあり

秋深し クダマキ鳴き飽き 妻静か

ツクワムシ最近泣かぬが気にかかる

山吹を無碍に手折るな女郎花

老木やぼけかも知れぬ戻り花

老木の呆けか知れぬ帰り花

悪行が五臓に澱む秋思かな

処理場の脇のイチジク美味なれど


Tシャツの乙女に戯る秋の風

美少女の瞳の奥の十三夜

美少女の双眸に射す秋日陰


敬老日ひざしも鈍き屋根瓦

エアコンの風より眠れる秋の風

暑気去りて昼寝が止まぬ午後の雲

だあいすき葉書が届く敬老の日


夕月夜沈みて星の豊かなる

夕月も豊かな星も雲の上

街灯に夕月星も薄められ

夕月も豊かな星も雲の上

街灯に夕月星も薄められ

鮭おろし熊さん今夜は盆踊り


鮭おろしクマも夜明かし踊るだろ

逆波に熊も浮かれる鮭おろし


大陸の風も未だに夏残す

宵闇に程よく煙草吸い込まれ

残暑とはとっても言えぬ暑さかな

何処からか来たりて茂る韮の花

秋風や妻を肥えさすスマホかな


傾城も白無垢を着る八朔日

最近の流行りは濃いめ白粉花

おしろいは疑惑増すたび濃ゆくなり

オンブバッタ袖にされたるオスの果て

ウグイスはホトトギスの詐欺知らず鳴く


青嵐を眼下に飛行新幹線

青嵐のさざ波を飛ぶ新幹線

飛蝗堕ち蟻の巣穴は大わらわ

青嵐を突き抜けて飛ぶ新幹線

夜半過ぎ目覚めて寝れぬ大暑かな

シルバーのガイドの旅に驟雨降る

あの方も老後の夢か麦の秋

富山路はみな豊かなり立山に雪

気温35℃それでも今日は半夏生

手も貸せず寄り添うだけの秋日和

夕凪や浴衣の衿の芳香かな

A品の葡萄は甘く高価なり

A品の葡萄の粒の甘さかな

夜半過ぎ雨音高く恵雨降る

いい天気今日はヒマワリ観に行くか

深夜にも来園者ありSさん逝く

看取られてSさんが逝く熱帯夜

ターミナルのSさんが逝く熱帯夜

みまもりのSさんが逝く熱帯夜

Sさんが逝った漆黒熱帯夜

Sさんが逝ったか目醒む残暑なり

川上を生きる岩魚の貌厳し

蝉の衣脱ぎてこぼれる乙女の香

羽衣を透かして見せるビキニかな

浴衣の娘ハンディファンに汗光る

気も揺らぎ蝉さえ泣かぬ住宅街

スイカ割り孫の力じゃ割れもせず

酔芙蓉宵待ち草を蚊帳で観る

ビキニ着て足の短い人もなし

清流の鮎の香味や石ぬめる

川上に生きる岩魚の面構え

朝顔は日陰に咲かず屋根に咲く

ハイビスカス右に差し替え浜歩く

気温35℃これでも今日は半夏生

妹の年に一度の桜桃狩

睡蓮は沼にこそ映え妙高山

富山路はみな豊かなり立山の雪

青嵐を突き抜けて行く新幹線

あの方も老後の夢か麦の春

誰それと話したくもなる梅雨の前

誰それと話しもしたき梅雨の前

浜は空き干場の目刺し 太きこと

漁船出て 浜の目刺し 太きなり

漁船出て浜の目刺し太きこと

海眠り浜の目刺し太きこと

新潟よそこはシュートだ夏半ば

手も貸さず寄り添うだけの秋の暮れ

手も貸せず寄り添うだけの冬隣

手も貸さず寄り添うだけの小春かな

昔日の恋がれし君やアマリリス

山遊び熊穴を出る季節なり

行く先は棒にも当たれ秋日和

早乙女の植えるに難き広田かな

朝凪や港の目刺し太きこと

朝御膳漁港の目刺しの太きこと

この絵にも値札付けたり冬の市

         AIの句を手直しした

売れ残る壺を商う小晦日

僧堂の経の唱和や若楓

いきる日は花盗人にもなりたくて

サンポカー頭上に輝くハナミズキ

微頭痛を圧して花苗求めけり

苗木市求める人は爺婆だけ

金を盗り割れにし山の冬の月

記念写真餌付く鴨らは修羅と化す

急かずとも道は半ばぞ早苗月

春の凪エンジン高く漁船でる

里山のおさなご眠る芽立ちかな

里山のしろくてあをき芽立ちかな

山の端や幼子眠る芽立ちかな

もの書けどものうい春の眠さかな

深水の美人版画や風薫る

春苗を植えよと思う怠さかな

北風や春の愁いの襲い来る

春疾風眩暈止メを服用す

大木と言う独活の木見たこともなし

春雨や漁港の海も静かなり

深水の美人版画の春の塗り

春暁の漁港の朝の忙しき

逝く春やコーヒー豆を吟味する

春の虹こういう時代も来るもんだ

かげろうの食を断ちても恋に飛ぶ

鳥曇り鳴きかう鳥は何処へ行く

酒の味わからなくなる蔵開き

人ごみも皆はしゃぎたる蔵開き

さくら散る江口だんごの縁台や

藤棚や孫の彼氏は苦労する

春時雨傘の置き場のあるやなし

花の雨このまま濡れて行こうかな

韓流は囀りうざしK-POPも

なまぬるいようず頭痛に腹痛し

春疾風湖岸に繋ぐ舟もなく

つちふるや唐はいまごろ大騒ぎ

痛いよと隣室のこえ秋雨滲む

芍薬の芽が育ち出す荒れ花壇

四月なか炬燵で眠る猫と妻

樹下に積む花びらを見て山茶花と知る

世間では花冷と聞くがまだつぼみ

古希を過ぎ働く喜びはる桜

筍は消化するのか春美味し

チューリップ花壇に咲かぬは何年か

モクレンや礼装の婦人逝きにけり

ハナチラシ風神雷神まかりくる

春北風(はるきた)や老いの入舞いし損ずる

ドンキホテ春の闇より出べくや  山口青邨(雪国)

古希を過ぎ働く喜びはる桜

木の芽摘み山を駆けずるチコもいた

春闇や枕絵妖しく光増す

世間では花冷と聞くがまだつぼみ

樹下に積む花びらを見て山茶花と知る

清明節新し児らの香り立つ

枯れた葉をのぞくと小さきオリズルラン

朝寒く薄手のダウン衣更着ぬ   (衣更着 寒いので衣を重ね着するという季語)

竜天に昇るといえど兆しなし   (竜天に昇るは春の季語だそう)

懸案を多く残して四月来る

空腹を耐えるか否か朝霞

寒暖差桜も思わず落花する

花冷えに電子歳時記届きおり

音質も詩歌もみんな中ほどで それでもいいやPCも中古で

タンポポや花が散るまで除草せず

枯れ葉目立つオリズルランを外に出し 葉を整理して根に堆肥したき

春雨や歩くプールの水の渦

藍色は四十八あり春の海


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