中山間地の再開発


 仕事をしていたとき、いわゆる限界集落と言われる地域の、お客さんも多くいた。お付き合いを始めた頃は元気で、仕事もしており、若い頃に貯めた預貯金も有り豊かだった。10年も経つと『子供が一緒に暮らそうと言っているがどうしようか』というような質問が多くなる。


 答えはいつも『働ける間はこちらにいて、いよいよ、限界になったら年金や預貯金をいっぱい持って行けばいいですよ』。年金や預貯金を生活費として差し出せば多分、居場所は出来る。しかし、生活環境の違いは克服出来ない。次第に空き家が目立つようになった。今はもう限界集落から消滅集落になっている所も多い。


 その中で、とても素晴らしいお爺ちゃんにお会いした。当時85才かな。戦争から比べればここでの暮らしは天国だと仰る。それで空いた耕作地を耕して居るが、11月頃に伺っても農作業が忙しく、相手してくれない。冬にお伺いすると、玄関の板の間に、綺麗に磨き上げられた小型のコンバインが鎮座している。『まるで戦車みたいだな』。彼はまだ何処かの戦線で自給自足しながら戦っているのかも知れない。『ずいぶん儲けられたでしょう』 『子供達全部に家を造ってやったよ』。 いや、そんなもんじゃないな。



話を中山間地の再開発に戻そう。 

1.農業の再編成

2.棚田での藻栽培 

3.里山の炭化水素の利用 


 1.農業の再編成 

棚田は大規模化が難しいのだが、美味しい米を生産できる地域もある。まず稲作技術の問題。これはJAさんにお願いするのも手だ。次に高価格での販売。これはJAさんでは難しい。ネットを利用するなどの販売システムの確立。

 予約販売 、精米設備を備えた小売りなどいろいろ考えられそうだ。営農規模は個人で10ー20ha必要だと思う。それには、田植え機とコンバインの問題がある。田植え機は直播技術の開発。コンバインはバイオエタノール等の原料として稲わらも収穫したい。


 2.棚田での藻栽培。

棚田は藻栽培に適していると思う。上流の水に肥料やCO2を供給すれば下流で濃縮した藻が採取できる。オイルや食品、飼料も製造。必要な技術は藻の分離と養殖地の建設だ。ワムシなどに食べさせて、稚魚の飼料として回収する事も提案する。日本は温帯なので、藻の生育条件によっては保温しなければならないので、このコストが問題。 


 3.里山の炭化水素の利用 

ここでは伐採運搬技術の機械化。バイオマス発電の高効率化。SOFC、超臨界CO2発電等に期待する。里山の植物は光合成を行って空気中のCO2を固定するが、実はこのほとんどが腐敗などによってCH4やCO2に分解される。


 アマゾンなどの熱帯雨林がCO2を固定しているという、排出権取引には反対だ。 お金の流が不明瞭だし、炭素の実固定量、CH4の排出などを考慮していないからだ。バイオマス発電によって、CO2を液化して海底などに保存できれば、目に見える形で、空気中のCO2等の温暖化物質を固定できる。


 炭素税は賛成だ。電気の他にCO2も販売できる可能性があるからだ。仮に日本で炭素税をかければおそらく数兆円の税収があるだろう。これを木質バイオマス等に全量充てれば乱開発を招く。発電所のCO2分離固定設備や水素自動車、太陽光、電池の開発費用などにも使用すべきだ。そうなるとCO2源が少なくなり木質バイオマスへの還元が少なくなる。その頃には、さらなるコストダウンが可能だろう。


 北海道が水素生産の適地だとの話がある。それならば、パイプラインで本州に運べばいい。パイプラインでの輸送にはにはCO2とH2を分離する必要がある。低温で圧力をかけてCO2ハイドレートとして分離が出来るかも知れない。H2、CO2をそのまま圧送するのもありそうだ。

 

 木質バイオマスを飼料化する案もある。家畜用飼料としては栄養分が足りないと思うので、藻からバイオオイルを抽出した残渣を混ぜて使う。排泄物から水素を製造して、SOFC超臨界CO2コンバインドサイクル発電をすれば発電効率は抜群に高い。もう一つの利点は、水素を製造した灰から肥料が作れることだ。北海道の畜産を振興する事もできる。食料の自給率も上がる。