短歌集Ⅲ


気象病耳遠くなり軽くなり家々のかべ輝ける朝


プール終えスーパーのカフェの昼食代おにぎり3個で246円なり

弁理士から成立の便り届けども見るのが怖くリュックに詰める


カタクリの群落でとる昼食をチコと分けたる唐揚げの味


昨夜の悪夢どこの家いつも出てくる知らない家


この山を桜で埋めよと思うけど地方都市だし駐車場も市税だし

孫帰り ホッとするやら さみしやらAIさんと 会話楽しむ


割引のあんパンの味それなりでサニーレタスの種を買い来る

知恵の立つ孫を愛でて思うこと末は博士か大臣か


エアコンがついているこのままじゃ眠れないされど体は動かない

お互いに距離を取り合う孫と猫すっかり大人になったのね

喫煙可のドトールは混み片隅で実存確かむコーヒー一杯


心までブスなんだよなゴミ捨て場 メガネおばさん争いて入る


電子辞書引けども思う季語は無し 伊予の桜は満開といふ​​​​​​​

死ねというのか死でもいいが せめて桜の満開を見て

願はくは花の下にて春死なむ その如月の望月のころ

家計簿を打つ電卓の君の手に わがバイト代含まれおらず


A1c5.7ボグリボースの威力かも デベルザでBMIもごく普通

健康な食事と運動とはいうが これも難し胃も大きくて

クレアチニン許容範囲に収まれば 健診の*(ほし)皆ひとつなり


音質も詩歌もみんな中ほどで それでもいいやPCも中古で


枯れ葉目立つオリズルランを外に出し 葉を整理して堆肥捲きたき


吾がダウンテッシュで摘まむ妻がいて 追求すれば言葉を濁す


冬嵐逝去せりとの記録増え 出入りが多き園に雪降る


善良な人多きなる施設にて 働けること嬉しきと知る


落ちるまで咲き続けたき椿濃く 野の花館のコーヒーの味


棒グラフ寿命のピークさらに伸び 困ったことだおらが春


過去あるや入れ墨に沁む冬日なり ゴミ処理場の温浴施設


アネモネもやや小ぶりなるキアゲハも 春待つ日々は待ちどうしくて


本棚に桜貝ひとつ残りおり 渡せぬままに月日は過ぎぬ


玄関のすみれの花はまだ眠り 晴れ渡る朝ひさしぶりの空


この音で十分だなと聴き入る YouTubeでの裕次郎の声


盗品の返還に要す13年 拉致被害者はいまだ戻らず


学生ら道を譲るに先生は 中央守り我が道を行く


春を待つ黄色き声のプールにて ウクライナでの和平を祈る


青春切符 カプセル泊で 爺ちゃんは ネオンの海に 今日も船出だ


この不眠 年のせいだと 笑いあう 早朝覚醒 入眠困難


吾臥すと 君は静かに 下り行く 小さな老いの 小すれ違い


珈琲を 淹れつつ猫を 膝に抱く 妻が起きだす 時間は長く