kissの後で
時間と空間が
複雑に
入り交じっていた
世界の事だったかも知れない
夕日を見ていた
ほっかりと大きな太陽が空に漂い
南の島に沈む夕日は
時の流れを
ゆるやかのする
ぼくらは
取り留めのない
おしゃべりをした
海に陽が落ちて
空が紫紺に染まるまで
それから
kissをした
モノトーン
の世界で
白桃
の風に誘われて
巻き貝の仲間が持つ
不可思議な螺旋
に沿って
堕ちていった
地中海の夕闇
にサフランを摘むとき
透き通る肌を持つ人魚
のしらべに
船乗りは帰れない
瑠璃色の刻
の底ではじけ
太古の海を彷徨う
それから
どれほどの時が経ったのだろう
南十字星が瞬いていた
海鳴りがする
遙か彼方の珊瑚礁の縁では
波が激しく砕け散り
海の底では
白蝶貝が妖しい光を放っている
南の島で知り合った彼女とHをしたが耐えきれず出してしまったほどの意味。勿論、吉岡実の「サフラン摘み」がベースにある。吉岡は少年愛を描いたが、アミーバは合体してお互いの体液を交換し合う。生物はどうして進化してしまったんだろうという思いがあった。今では互いの粘膜をすり合わせることでしか愛し合えない。体液を交換した時、結実するか否か。
※
サフラン摘み 吉岡実
『現代詩の鑑賞101』大岡信編
クレタの或る王宮の壁に
「サフラン摘み」と
呼ばれる華麗な壁画があるそうだ
そこでは 少年が四つんばいになって
サフランを摘んでいる
岩の間には碧い波がうずまき模様をくりかえす日々
だがわれわれにはうしろ姿しか見えない
少年の額に もしも太陽が差したら
星形の塩が浮かんでくる
割れた少年の尻が夕暮れの岬で
突き出されるとき
われわれは 一茎のサフランの花の香液のしたたりを認める
波が来る 白い三角波
次に斬首された
美しい猿の首が飾られるであろう
目をとじた少年の闇深く入りこんだ
石英のような顔の上に
春の果実と魚で構成された
アルチンボルドの肖像画のように
腐敗してゆく すべては
表面から
処女の肌もあらがいがたき夜の
エーゲ海の下の信仰と呪詛に
なめされた猿のトルソ
そよぐ死せる青い毛
ぬれた少年の肩が支えるものは
乳母の太股であるのか
猿のかくされた陰茎であるのか
大鏡のなかにそれはうつる
表意文字のように
夕焼は遠い円柱から染めてくる
消える波
褐色の巻貝の内部をめぐりめぐり
『歌』はうまれる
サフランの花の淡い紫
招く者があるとしたら
少年は岩棚をかけおりて
数ある仮死のなかから溺死の姿を藉りる
われわれは今しばらく 語らず
語るべからず
泳ぐ猿の迷信を……
天蓋を波が越える日までは
※
私は結実する相手を求めていたし、だから、ああいう詩になった。勿論、吉岡の詩に及ぶべくもない。実際には架空の世界での話で、実は、白蝶貝にするか黒蝶貝にするかで、女友達と話した。私としたら、石垣島の川平湾の黒蝶貝のイメージだったんだが、詩としたら白蝶貝だろうか。
結実した末が2人の子供と言うことになるのだろう。どれだけ苦労させられたか。今でも苦労している。その結実の結実の先が孫ということになる。あの時、必死に家内を口説かなかったら、今はない。そう思うと不思議だ。だから、ああいう平凡な詩にしかならなかったんだろうか。勿論、才能の問題もある。
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