名古屋のおばさん事件

2017-12-15 13:52:03


 家内の実家でのことだが、祖父が寝たきりになった。家内の家は中小企業で、とても面倒は見れない。なんとか、伝手を頼って施設に入所させた。ある日、名古屋のおばさんが見舞いに来た。施設に入れるなんて可哀そうだと、泣き叫んだらしい。


 確かに、当時の施設環境は劣悪で、老人の介護は家庭でやることが普通だった。結局、施設から引き取って祖母が介護することになった。名古屋のおばさんは、非常に親孝行をしたつもりで、翌日には名古屋に帰った。しかし、寝たきり老人を祖母が介護できるはずもなく、大きな褥瘡を作って、苦しみの中で死んだ。


 葬式の日に、布団を庭で燃やしたら、大きな炎になり、ろうそくの火は天井まで届くほど燃え上がったという。どれほどの遺恨を残したかと思う。名古屋のおばさんが葬式に来ていたかどうかは知らない。自分の犯した罪の重大さにも気づかないだろう。


 この話はわが家では名古屋のおばさん事件として語り継いでいる。わが家の母の介護の責任者は私と家内だ。不満なら自分で引き取って介護してくれ。胃ろう等の延命治療を拒否しているのは神の領域に踏み込みたくないからだ。人間の領域では最善を尽くすつもりだ。


 妹や弟たちにも見取りをさせてあげせたい。だが、誰かが、名古屋のおばさん、にならないとは限らない。私自身も、名古屋のおばさん、にならぬとも限らない。